MTKCのストラト談義

三度の飯とギターが好きなMTKCが主にFender製ストラトキャスターについて語ります。

GALAXY RED 徹底解剖

今更ですが、憧れのギタリストであるL'Arc-en-Ciel ken氏のシグネチャーモデル、GALAXY REDを購入しました。

Fenderのジャパンメイドでありながら希望小売価格が174,000円という高価格モデル。既に生産終了になっており、今後はネット上の記事が減少、削除されていくものと思われます。

そこでこの記事では「中古市場での出品、購入に関する参考文献」及び「メンテナンスの参考文献」を目指し、GALAXY REDを徹底解剖したいと思います。

 

Fender公式のken氏のインタビュー記事です。読んだ事が無い方は一度読んでおきましょう。Ken氏のGALAXY REDにかける思いが伝わってきます。

Kenインタビュー前編

Kenインタビュー後編 

 

1-1.概要

製品名:Ken Stratocaster® Galaxy Red
製品番号:5258302392
希望小売価格:174,000円(税別)

L'Arc-en-Cielのギタリストであるken氏のシグネチャーモデルです。

2010年にはFender カスタムショップから高品位モデルが発売されておりましたが、その価格はチームビルド(限定30本生産)が522,900円、ken氏が所有するGALAXY REDの担当者であるグレッグ・フェスラー氏製のマスタービルド(完全受注生産)が774,900円という、一般市民にはとても手の届かない価格で発売されました。

そのGALAXY REDが入手しやすい価格で2017年春にFenderのJAPAN MADEで発売されました。「より手に取りやすい価格帯で」という目的でしたが、174,000円という価格はJAPAN MADEの中では最高峰クラスです。

※JAPAN MADE最高価格帯はYngwie Malmsteen Stratが183,600円、特別仕様のMade in Japan 2019 Limited Collectionが198,000円。

GALAXY REDの価格は2020年3/9時点のUSA製のレギュラーライン、American Professional Stratocaster®の185,000円に迫ります。

 

これまでken氏のモデルはいずれもフェルナンデス社から発売されており、このJAPAN MADE品は一般ギターキッズが手を出せる「本物のストラトキャスターでは初のkenモデル」となりました。

本記事ではカスタムショップ製のスペックから「どこを妥協して価格を落としたのか」という点にも触れたいと思います。

 

1-2.ボディ解剖

BODY MATERIAL : Alder
BODY FINISH : Polyurethane, Galaxy Red
BODY SHAPE : Stratocaster®

アルダーボディにポリウレタン塗装という中位グレードの仕様です。

特徴は「GALAXY RED」というボディカラー。赤と黒のサンバーストで、少量のラメが入っています。

 

カスタムショップ製は「セレクトアルダー」+「ニトロセルロースシンラッカー」ですので、ここで大幅に価格を抑えています。

アルダーボディの場合1P〜5Pまでは聞いたことがあるのですが、GALAXY REDは透明性のあるカラーリングでは無いため、手持ちのボディのピース数を確認することはできません。一般的に複数ピースから成るボディの方が価格が安いため、複数ピースのアルダーボディである可能性が高いと考えます。

 

1-3.ネック解剖

NECK
NECK MATERIAL : Maple
NECK FINISH : Satin Laquer
NECK SHAPE : Galaxy Red “C” Shape

メイプルネックにラージヘッドという、ken氏拘りのスペックになっています。

過去からインタビューで語っていますが、ken氏はメイプル指板とラージヘッドに相当な拘りを持っているようです。

ネックの太さにも相当な拘りがあり、様々な要因からCシェイプを選択されています。

当方が所有するGALAXY REDも演奏時の弦振動がネックにビンビン伝わりますので、ken氏の拘りがJAPANのハイクオリティな工作技術によってしっかり反映されているものと思われます。

 

フィニッシュはサテンラッカーとなっており、ラッカー塗装を「サテン処理(敢えて粗めのサンディングで止めてサラサラにする方法)」が取られています。

かつては高級ネックの代名詞であったラッカー塗装ですが、近年ではMexico工場生産のUSA製にも採用されるなど、中位モデルへの搭載が進んでいます。ここもken氏、あるいはFender社の「ネックはラッカーが良い」という拘りが反映されているのではないかと思います。

塗装の厚みは適度に薄く、USAのポリウレタン塗装と比べると薄さがわかります。ウレタン嫌いのギタリストもストレスなく弾けるかと思います。


SCALE LENGTH : 25.5" (648 mm)
FINGERBOARD MATERIAL : Maple
FINGERBOARD RADIUS : 9.5" (250 mm)
NUMBER OF FRETS : 21
FRET SIZE : Vintage-Style

NUT MATERIAL : Synthetic Bone
NUT WIDTH : 1.650" (42 mm)

STRINGS : NPS,.009-.042 Gauges
POSITION INLAYS : Black
TRUSS ROD : Vintage-Style
TRUSS ROD NUT : Vintage-Style Slotted

スケール、指板のRはモダンなストラトキャスターの仕様となっています(ヴィンテージなストラトの指板Rは7.25)。

フレット数が21でのすで、Driver's highをコピーする際には1音半チョーキングが必要になります。

ナットの「Synthetic Bone」は素材が明記されていないものの、一般的に考えて「オイル含浸牛骨ナット」だと思われます。ナットの溝切りは009-042となっています。

 

1-4.アッセンブリ解剖

BRIDGE PICKUP : Custom Vintage-Style Single-Coil Strat
MIDDLE PICKUP : Custom Vintage-Style Single-Coil Strat
NECK PICKUP : Custom Vintage-Style Single-Coil Strat

カスタムショップ製との1番大きな違いはピックアップです。カスタムショップ製のシグネチャーモデルにはリアとセンターにハンドワウンド(手巻き)のFat 50's、フロントにハンドワウンドの69ストラトが搭載されています。なお、本人のギターには伝説のピックアップ巻き師であるアビゲイル・イバラ氏の手巻きピックアップが搭載されています。

JAPAN MADEはそこまでのコストがかけられないということで、カスタムワウンドされたピックアップが搭載されています。ピックアップの載せ換えは比較的ハードルが低いという考えから、電装パーツにお金をかけてピックアップは交換前提の仕様にしているようにも思えます。気に入らなきゃ気軽に変えてね、という感じです。

 

カスタムショップ製のピックアップの仕様を抜粋すると以下となっています。

フロント:69ストラト アルニコ5+エナメル皮膜マグネットワイヤー 抵抗値5.8K

センター:Fat 50'sストラト アルニコ5+Formvarマグネットワイヤー 抵抗値6.3K

リア:Fat 50'sストラト アルニコ5+Formvarマグネットワイヤー 抵抗値6.2K

 

一方でカスタムワウンドのピックアップは実測値で以下でした。

 

フロント:抵抗値6.15K

センター:抵抗値6.29K

リア:抵抗値6.82K

Fender公式の謳う抵抗値と実測値には開きがあるという報告を見かけますが)抵抗値から推測するとFat'50やTexas Specialに近いパワー感のあるシングルピックアップが狙いと考えられます。

 

カスタムワウンドのピックアップも悪くは無いのですが、もう少し良くしたい!という方はピックアップ交換を視野に入れましょう。交換ピックアップのオススメは当然Fender カスタムショップ製のFat 50'sと69になります。

どちらも購入するとウン万円かかってしまうので、まずはどちらか!という方は、ken氏はライブ中はほとんどフロントピックアップで弾くということですので、まずはフロントに69を搭載することを優先してはどうかと思います。

 

 

CONTROLS : Master Volume, Tone1 (Neck), Tone2 (Middle and Bridge)

SWITCHING : 5-Position Blade : [Position 1] Bridge Pickup [Position 2] Bridge and Middle Pickups [Position 3] Middle Pickup [Position 4] Middle and Neck Pickups [Position 5] Neck
CONFIGURATION : SSS

電装パーツはいずれもUS製であり、ここにもken氏の拘りがあります。

 

コントロール類は標準的なトーン回路かな、と思います。2トーン回路ですが、これはライブでの使い勝手を考慮してとのこと。

ピックアップセレクターも選択肢を増やす意図で5点切り替え式です。

 

HARDWARE
BRIDGE : 6-Saddle Vintage-Style Synchronized Tremolo
HARDWARE FINISH : Black

CONTROL KNOBS : Black
NECK PLATE : 4-Bolt Black
TUNING MACHINES : SPERZEL/GTR TRIM LOCK BLACK

6点止めのトレモロブリッジは標準的ですが、パーツがいずれもブラックパーツというのが特徴です。

特に特徴的なのはシュパーゼルのロックペグで、これも本人のカスタムショップ製の仕様を踏襲しています。当方も初めてロックペグで弦交換をしましたが、もう通常タイプのペグには戻れないくらいの快感がありました。

 

なお、カスタムショップのマスタービルドのみネックプレートにken氏を象徴するライオンの刻印が入っています。

 

MISCELLANEOUS
PICKGUARD : Pink Anodized with Laquer

ピックガードはピンク色のアノダイズドピックガード(陽極酸化処理されたアルミが素材)にラッカー塗装がされた特殊仕様です。(出荷時保護用フィルムではないので要注意です!)

ラッカー塗装は爪が削らないようにするための工夫であり、ある意味、このピックガードが最も個性的な点と言えます。

 

ただ、このラッカー処理が曲者で、ネジ穴周りやエッジなどの負荷がかかりやすい部分からペリペリ剥がれていくようです。ただ、剥がれたところでアノダイズドピックガードの特性は変わらないので、プロギタリストのように長時間弾くことがなければ問題ないかと思います。

 

このアノダイズドピックガードの仕様はken氏のお気に入りで、彼が初めて入手した銅色のカスタムショップ製ストラト(通称コッパーキャスター)からの付き合いと思われます。フェルナンデスのモデルにも搭載されているものがあります。


OTHER FEATURES : Special Ken Signature on Head Back
CASE/GIG BAG : Deluxe Gig Bag

ヘッド裏にサインというのが素晴らしい配慮で、USA製にはヘッド面にサインがされているのに実際そのアーティストが使うギターにはサインが入っていなくて萎える、という悲痛な想いをクラプトンモデルで経験しているので、何気に1番嬉しいポイントでした。

 

(情報を確認次第追記します)